目次
オフィスの通信環境を整えるうえで欠かせないビジネスフォンですが、「思ったよりも高い」と感じる方は少なくありません。主装置や工事費など見積書に並ぶ項目に戸惑う情シス担当者や経営者も多いはずです。
そこで今回は、ビジネスフォンが高額になりやすい構造的な理由を明らかにするとともに、中古機器やクラウドPBX、リース契約などを活用した費用削減の具体策も紹介します。初期費用を抑えつつ業務に最適な電話環境を整えたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスフォンの費用が高い理由とは?
ビジネスフォンは業務効率を高めるツールですが、導入費用が高額になりやすい点がネックです。その背景には家庭用電話機とは異なる構造や設置要件が関係しています。ここでは主装置(PBX)の価格、高機能な機器設計、専門業者による設置工事といった3つの主要要因に分けて、コストが高くなる理由を解説します。
主装置(PBX)の費用が高い
ビジネスフォン導入時にかかる費用の中でも、特に高額になりやすいのが主装置(PBX)です。主装置は外線と内線の通話を制御し、多機能電話機との連携を担う中核的な機器で、企業の規模に応じた選定が求められます。
たとえば小規模事業者向けのSタイプでも価格はおよそ20万円からで、中規模以上のモデルになると100万円を超えることもあります。さらに、内線機能や保留転送などを利用するには、専用ユニットの追加が必要となり、1つあたり1万〜3万円の費用が発生します。
高機能・多機能な設計による価格の上昇
ビジネスフォンの価格が高くなる背景には、家庭用電話にはない高機能・多機能な設計も影響しています。内線通話や保留転送、同時着信、IVR(自動音声応答)など、業務効率を高めるための機能が多数搭載されており、それに伴い本体価格も上昇します。
一般的に、1台あたりの相場は3〜5万円程度。内部には複数の専用制御基板が組み込まれているのが特徴です。さらに、これらの機能を有効に活用するには主装置との連携が不可欠であり、システム全体の導入費用にも大きく影響しています。
設置や配線工事が必要となるため
ビジネスフォンを導入する際は機器の購入だけでなく、専門業者による設置や配線工事も必要です。家庭用電話のようにコンセントに差すだけでは使えず、主装置と各電話機を正しく接続する配線作業や、通話機能の設定には専門的な知識が求められます。
そのため、施工は「電気通信設備工事担任者」などの有資格者が対応するのが一般的です。設置費の相場は電話機1台あたり1〜2万円程度とされ、作業員の派遣費や回線の引き込み工事なども別途発生します。こうした工事費用が、初期導入コストを押し上げる一因となっています。
ビジネスフォンの導入コストを抑える方法
ビジネスフォンは便利な一方で、導入にかかる初期費用の高さがネックとなりがちです。しかし、機種の選定や契約方法を工夫すれば、コストを抑えながら必要な機能を確保することも可能です。ここでは中古品やクラウドPBX、リース契約といった代表的な手段を紹介し、それぞれの特徴と導入時の注意点を解説します。
・中古ビジネスフォンを導入する
中古のビジネスフォンを導入すれば初期費用を抑えることができます。新品では1台あたり3~5万円が相場とされる機器でも、中古品であれば1万円未満で入手できるケースもあります。特にスタートアップや小規模事業者にとっては、導入コストを3分の1から10分の1程度にまで圧縮できる点が大きな魅力です。
ただし、中古品は販売店の品質管理体制によって機器の状態に差があるため、動作確認済みや保証付きの商品を取り扱う信頼性の高い業者を選ぶことが重要です。また、中古品であっても保守契約を結んでおけば、万が一の故障時にもスムーズに対応してもらえます。
・クラウドPBXへの切り替えを検討する
クラウドPBXへの切り替えも、ビジネスフォン導入時の初期費用を抑える効果的な方法です。従来必要だった主装置や配線工事が不要なため、導入コストを大きく削減できます。インターネット環境さえあれば、スマートフォンやPCを電話端末として活用できる点も魅力です。
テレワークや外出先での業務にも柔軟に対応できるほか、内線通話や転送、IVR(自動音声応答)といった機能もクラウド上で利用可能です。こうした拡張性の高さにより、運用の自由度が広がります。
・リース契約を活用して初期費用を抑える
ビジネスフォンを導入する際、初期費用の負担を軽減したい場合にはリース契約の利用も効果的です。機器を一括購入するのではなく、月額料金で使用できるため、資金繰りに余裕がない中小企業でも無理なく導入が可能となります。
リース料金には電話機や主装置、設置工事費用などが含まれており、毎月の支払いを経費として処理できる点も魅力です。加えて、契約期間中は最新機種を継続的に使える場合もあります。
ただし、途中解約が原則としてできないことや、最終的な支払総額が購入費用を上回る可能性がある点には注意が必要です。
リース契約とは?
ビジネスフォンを導入する際、初期費用を抑える手段として注目されるのがリース契約です。購入とは異なり機器を月額費用で借りる形となるため、まとまった資金が不要で導入のハードルを下げることができます。ここではリース契約の基本的な仕組みや料金構成、契約の流れについて解説します。
ビジネスフォンのリースの仕組み
ビジネスフォンのリースとは主装置や電話機、工事費用などを含む設備一式をリース会社から借り受け、月々定額の料金を支払って利用する契約形態です。初期費用を大幅に抑えられるため、資金繰りに余裕のない中小企業や起業直後の導入にも適しています。
契約期間は5~7年が一般的で、終了後は再リース・買取・返却といった選択肢が用意されています。月額料金には機器代のほか、リース手数料や保険料、税金などが含まれており、契約内容によっては保守サービスが付帯することもあります。
費用を一定に保てる点はメリットですが、途中解約が原則できないといった制約もあるため、事前に契約条件をしっかり確認しておくことが大切です。
リース料金の相場と内訳
ビジネスフォンのリース料金は、導入する機器の構成や契約期間によって大きく異なります。一般的には3〜10台の電話機で月額3,000〜12,000円程度が相場です。
この料金には電話機本体や主装置、設置工事費に加え、リース手数料(料率)などが含まれます。たとえば総額34万円の設備を7年契約(料率1.5%)でリースした場合、月額料金はおよそ5,100円、支払総額は42万円を超える計算です。
リース料率は契約年数によって変動し、5年で2.0%、6年で1.7%、7年で1.5%が目安とされています。契約の際は保守費用や保険料、税金の取り扱いについても確認しておくと安心です。
リース契約の流れと期間
ビジネスフォンのリース契約は、申し込みから利用開始まで一般的に5つのステップで進みます。まず業者に見積もりを依頼し、内容に納得したうえで申し込みを行います。続いてリース会社による審査が行われ、通過すれば正式な契約の締結です。
契約後は業者による設置工事に移り、電話機や主装置の設置・配線が完了すれば、利用を開始できます。契約期間は通常5〜7年程度です。契約満了時には機器を返却するか、再リースや買取を選択することになります。
再リースを選んだ場合割安な料金で継続利用できるケースもあり、用途や予算に応じて柔軟な対応が可能です。
ビジネスフォンのリース契約のメリット
ビジネスフォンの導入コストを抑えたい企業にとって、リース契約は有力な選択肢の1つです。初期費用を抑えながら必要な台数を整えられるだけでなく、最新機種を導入しやすい点も魅力です。また、毎月の支払いを経費として処理できるため、会計面でもメリットがあります。ここではリース契約を活用することで得られる主なメリットを紹介します。
①初期費用を抑えて導入することができる
ビジネスフォンを導入する際、ネックになるのが高額な初期費用です。主装置や多機能電話機に加え、設置・配線工事の費用も発生するため、新品購入では総額が数十万円から百万円を超えるケースもあります。
このようなコスト負担を軽減する手段として有効なのが、リース契約の活用です。機器一式や設置費用を月額料金に分割できるため、初期費用をほぼゼロに抑えて導入できます。また、中古ビジネスフォンの利用やクラウドPBXへの切り替えも初期コスト削減に効果的です。
中古品であれば、1台1万円以下で購入できる場合もあり、クラウドPBXなら主装置や工事が不要なため、導入費用をさらに抑えられます。限られた予算の中で通信環境を整えたい中小企業やスタートアップにとって、これらの選択肢は魅力的といえるでしょう。
②最新機種を手軽に利用することができる
ビジネスフォンのリース契約を活用すれば、初期費用をかけずに最新機種を導入できるのが大きな魅力です。購入では高額になりがちな最新モデルもリースであれば月々の一定額で利用できるため、常に新しい機能を業務に取り入れやすくなります。
たとえばスマートフォンとの連携機能やIP対応、拡張性に優れた機種も選択肢に含まれ、自社のニーズに応じた導入が可能です。さらに、リース会社によっては複数メーカーの製品から自由に選べる場合もあり、自社の業務スタイルに合った最適な機種を選定しやすいのも特長です。
③リース料を経費として処理することができる
ビジネスフォンをリース契約で導入するもう1つのメリットは、毎月のリース料を経費として処理できる点にあります。購入した場合は減価償却の手続きが必要になり会計処理が煩雑になるほか、固定資産税の対象にもなるため注意が必要です。
その点リース契約であれば、月々の支払いを通信費などの損金として計上できるため、法人税の節税効果が期待できます。たとえば月額1万5,000円のリース料であれば、年間18万円を全額経費にできる計算です。
また、支払い額が一定に保たれることで資金繰りの見通しも立てやすくなります。
ビジネスフォンのリース契約のデメリット
初期費用を抑えて導入できるビジネスフォンのリース契約は、多くの企業にとって魅力的な選択肢です。しかし、その一方で見落としがちなデメリットも存在します。ここでは契約後に後悔しないために知っておきたいリース契約の代表的なデメリットについて解説します。
①支払い総額が購入するよりも高くなる可能性がある
リース契約は初期費用を抑えて導入できる反面、長期的に見ると購入より支払総額が高くなる場合があります。リース料には機器代のほか、保険料や契約手数料、金利、税金などが上乗せされており、契約期間が5~7年に及ぶと最終的な総額に数万円から十数万円の差が出ることもあります。
たとえば機器代が50万円の場合、7年リースでは総額が約57万円になるケースも見られます。契約によっては工事費や保守費が含まれていないこともあるため、見積書の内訳を丁寧に確認することが重要です。購入とリースそれぞれのコストを事前に比較し、自社にとってどちらが有利かを検討しましょう。
②契約期間内での途中解約は不可
リース契約は初期費用を抑えてビジネスフォンを導入できる点が魅力ですが、一方で契約期間中の途中解約ができないという制約があります。これは、リース契約がファイナンス契約に該当し、クーリングオフ制度の対象外とされているためです。
たとえば事業の縮小やオフィスの移転などで電話機が不要になった場合でも、契約期間の残りに相当するリース料金や違約金の支払いが求められます。そのため、導入にあたっては契約期間や利用予定年数を十分に確認し、自社の運用に適したプランを選ぶことが重要です。
途中解約によるリスクをできるだけ避けたい場合は、柔軟に対応できるレンタル契約やクラウドPBXの導入も視野に入れるとよいでしょう。
③契約期間終了後に機器の返済をする必要がある
ビジネスフォンのリース契約では、契約期間が満了すると原則として機器を返却する必要があります。これはリースが「所有権を伴わない使用契約」であるためです。そのため、たとえ支払総額が機器の購入価格を上回っていても、電話機や主装置は資産としては扱われません。
契約終了時には、返却のほかに再リース(契約延長)や買取といった選択肢が提示されることもあります。ただし、再リースでは保守や保険の対象外となるケースが多く、買取も割高になる傾向が見られます。
こうした背景を踏まえ、契約満了時の対応についてはあらかじめ確認しておき、運用の継続性やコスト面を含めて慎重に判断することが大切です。
導入コストを抑えて賢くビジネスフォンを選び、導入をしよう
ビジネスフォンの導入は業務効率化に欠かせない一方で、主装置や配線工事といった高額な初期費用がネックになりがちです。しかし、中古機器の活用やクラウドPBXの導入、リース契約の活用といった選択肢を上手に取り入れれば、コストを大幅に抑えることが可能です。たとえば中古ビジネスフォンであれば1台1万円以下で購入でき、クラウドPBXを導入すれば主装置や工事費そのものが不要になります。
また、リース契約を選べばまとまった初期投資を避けつつ必要な機器を導入できる点も魅力です。ただしそれぞれにメリット・デメリットがあるため、導入目的や運用期間、予算に応じて最適な方法を見極めることが重要です。費用と機能のバランスを考慮しながら、将来を見据えた通信環境を整えていきましょう。