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顧客対応の品質を向上させたい、あるいは新人オペレーターの教育を効率化したいと考えていませんか?そんなときに役立つのがビジネスフォンの「モニタリング機能」です。通話中の会話を第三者がリアルタイムで確認できるこの機能は、教育やトラブル対応、クレーム防止などさまざまな場面で活用されています。
そこで今回は、ビジネスフォンとクラウドPBXのモニタリング機能の違いや活用法、導入時の注意点までわかりやすく解説します。自社に最適な通話管理方法を検討する際の参考にしてみてください。
ビジネスフォンのモニタリング機能とは
ビジネスフォンのモニタリング機能とは、通話中の音声を第三者が別の電話機からリアルタイムで聞くことができる機能です。たとえば管理者や先輩社員がオペレーターの対応内容を確認したり、新人の通話を教育目的でチェックしたりする際に活用されます。
この機能は「通話モニター」や「聴話」とも呼ばれ、通話相手に気づかれることなく内容を確認できる点が特徴です。品質管理やトラブル対応の強化に役立つ手段として、多くの現場で取り入れられています。
さらに、モニタリング機能には「ウィスパー」や「バージイン」といった派生モードも用意されています。ウィスパーではオペレーターにのみアドバイスを伝えることができ、顧客にはその声は届きません。一方、バージインは通話に割り込んで対応を引き継ぐモードで、緊急時の対応に適しています。
これらの機能を組み合わせることで、通話品質の向上や社内教育の効率化、さらにはコンプライアンス対策にも柔軟に対応できます。
ビジネスフォンでモニタリングを行う2つの方法
ビジネスフォンでモニタリングを行う方法は、大きく分けて「ビジネスフォン本体の機能を利用する方法」と「クラウドPBXを活用する方法」の2つがあります。ここでは、それぞれの方法の特徴と仕組みについて紹介します。
ビジネスフォン本体のモニタリング機能を使う方法
ビジネスフォン本体に搭載されたモニタリング機能を使えば、追加のシステムを導入することなく通話の確認が可能です。主装置の設定メニューからモニタリング機能を有効にし対象となる内線番号やグループを指定することで、指定された通話を別の電話機からリアルタイムで聞くことができます。
機種によっては専用のモニターボタンを電話機に割り当てることで、ワンタッチでモニタリングを開始できる設計になっています。また、音声だけを確認する「モニター」に加え、指示を伝える「ウィスパー」、通話に割り込む「バージイン」などのモードを選択できる機種もあります。
クラウドPBXを利用したモニタリング方法
クラウドPBXを活用したモニタリングは従来のように物理的なビジネスフォン機器に依存せず、インターネット経由で通話内容を確認できるのが大きな特徴です。専用の管理画面やアプリを通じて管理者がオフィス外からでもリアルタイムで通話をモニタリングできるため、場所を問わず柔軟な対応が可能になります。
また、「聞く」だけでなく、必要に応じてウィスパリング機能でオペレーターにアドバイスを送ったり、バージイン機能で通話に介入したりと、状況に応じた対応も行えます。録音や通話ログの保存機能と連携すれば後から内容を確認することもでき、教育資料や品質改善の分析にも活用しやすくなります。
設定作業はサービス提供会社のサポートを受けながら進めるのが一般的で、導入のハードルは比較的低めです。
クラウドPBXならではのモニタリング機能とは
クラウドPBXには従来型のビジネスフォンにはない多彩なモニタリング機能が搭載されており、より柔軟かつ効率的な通話管理を実現できます。ここでは、クラウドPBXに特化したモニタリング機能の特徴と活用法について詳しく解説します。
リアルタイムでの通話確認とフィードバックが可能
クラウドPBXの大きな特長の1つが、通話内容をリアルタイムで確認できる点です。管理者は専用の管理画面やアプリを通じて、スタッフの応対状況をその場で把握できます。通話中に必要な指示を出したり、ウィスパリング機能を使って相手に聞こえないようアドバイスを送ることも可能です。
特に、新人オペレーターや応対に不慣れなスタッフに対しては、実際の会話の流れを見ながらその場でサポートできるため、スムーズな対応が促されます。問題が起きそうなやりとりも早い段階で察知でき、迅速な対応につなげられるのもメリットです。
物理的制約を受けないリモート対応に強い
クラウドPBXのもう1つの特徴は、場所に縛られずに通話のモニタリングが行えることです。従来のビジネスフォンでは社内の主装置や配線環境に依存していたため、オフィス外からの確認は困難なケースが多く見られました。
クラウドPBXであればインターネットを経由してサービスが提供されるため、パソコンやスマートフォンといった端末があれば在宅勤務中でも通話のモニタリングが可能です。たとえばリモートワークを導入している企業でも通話対応の品質をリアルタイムで確認でき、必要に応じて指導や記録を行うことができます。
録音・保存・共有がスムーズにできる
クラウドPBXの導入によって、通話の録音・保存・共有が非常にスムーズになります。従来のビジネスフォンでは録音機能に制限があったり、音声データの取り出しに手間がかかったりするケースが少なくありませんでした。クラウドPBXでは通話内容が自動でクラウド上に保存されるため、必要なときにすぐアクセスできます。
録音データは検索機能やフィルターを使って素早く絞り込みができ、ダウンロードや社内共有もワンクリックで完了。教育や品質管理、トラブル対応の記録としても活用しやすく、業務の効率化に直結します。
さらに、多くのクラウドPBXサービスでは、音声データの暗号化やアクセス権限の設定など、セキュリティ対策も整備されています。
ビジネスフォンのモニタリング機能を活用する4つのメリット
ビジネスフォンのモニタリング機能は単なる通話の確認にとどまらず、業務の効率化や組織全体の品質向上に役立つ多くのメリットがあります。ここではモニタリング機能を活用することで得られる4つの代表的なメリットを紹介します。
新人教育の効率化につながる
ビジネスフォンのモニタリング機能は新人教育の効率化に役立ちます。オペレーターの通話をリアルタイムで確認できるため、実際の対応状況を把握しながら的確なフィードバックを行うことが可能です。通話終了後に録音データを活用すれば、良かった点や改善点を具体的に伝えることができ、指導の質も高まります。
また、ウィスパリング機能を併用すれば通話中でもその場でサポートが行えます。不安やミスを最小限に抑えながら、実践を通じたスキル習得を促すことができる点も特徴です。
クレーム対応力の向上が期待できる
モニタリング機能を活用することで、クレーム対応力の向上も期待できます。通話内容をリアルタイムで確認できるため、オペレーターが困っている状況をすぐに察知し、ウィスパリング機能を使って的確な指示を出すことが可能です。
また、トラブルが発生した際の会話を録音しておけば後から正確な内容を確認でき、事実関係の把握がスムーズになります。やりとりの根拠を示すことで、顧客への説明にも説得力が生まれます。
クレームに迅速かつ適切に対応できれば、顧客満足度の回復や信頼の維持にもつながります。さらに、蓄積された通話データを分析することで、対応の傾向や問題点が見えてきます。こうした情報は、再発防止や対応マニュアルの見直しにも役立ちます。
応対品質のチェックと改善に活用できる
ビジネスフォンのモニタリング機能は、従業員の応対品質をチェックし、改善につなげる手段としても効果的です。実際の通話をリアルタイムで確認したり録音を活用して振り返ったりすることで、スキルのばらつきや改善点を客観的に把握できます。
特に複数のオペレーターが在籍する環境では、評価基準の統一やフィードバックの裏付けとしても役立ちます。さらに、言葉遣いや話し方、顧客への配慮が適切に行われているかを分析すれば、対応品質の底上げにもつながります。
クラウドPBXと併用することで、録音データの蓄積や共有が容易になり、定期的な振り返りや研修への活用もしやすくなります。
コンプライアンスやトラブル防止にも貢献
モニタリング機能はコンプライアンスの徹底やトラブルの未然防止にも効果的です。通話内容を録音・保存しておくことで、「言った・言わない」といった食い違いを防ぎ、クレームや法的トラブルへの備えとしても機能します。
また、社内規定に則った対応が行われているかを確認する手段としても役立ち、業務の透明性や従業員の意識向上にもつながります。特に、金融・保険などの法的規制が厳しい業種では、モニタリングの導入が義務化されていることもあり、法令遵守の観点からも重要です。
さらに、録音データを定期的に確認・分析することで、対応の傾向や改善点を把握でき、顧客満足度の向上にもつながります。
ビジネスフォンのモニタリング機能を導入する前に知っておきたい注意点
ビジネスフォンのモニタリング機能は非常に便利な反面、導入や運用にはいくつかの注意点があります。ここではモニタリング機能を導入する前に知っておきたいポイントを解説します。
モニタリング機能の設定には専門業者への依頼が必要
モニタリング機能をビジネスフォンに導入するには、専門業者への依頼が基本です。主装置や内線番号、動作モードなどの設定には、専門的な知識と経験が求められるためです。
特に複数拠点を展開している企業やクラウドPBXとの連携を前提とした構成では、ネットワークやセキュリティ面での配慮も欠かせません。自社だけで対応しようとすると、設定ミスによってモニタリングが正常に動作しなかったり、通話に支障が出たりする可能性があります。
誤操作を防ぐには社内マニュアルを整備する必要がある
モニタリング機能を導入する際は、誤操作によるトラブルを防ぐためにも社内マニュアルの整備が欠かせません。モニタリングは通話の傍受や録音を行う機能であるため、操作ミスによって顧客対応に支障が出たり、プライバシー上の問題に発展したりするリスクがあります。
こうしたリスクを回避するには操作手順や注意点を文書化し、関係者へ周知徹底することが重要です。たとえばモニター開始・終了の手順やウィスパリングの使い方、録音データの保存先や確認方法など、機能ごとに業務フローを明示しておくとよいでしょう。
マニュアルが整備されていれば、誰が扱っても一定の品質と安全性を保つことができ、新人や異動者への引き継ぎもスムーズになります。
業員に同意を得てプライバシー問題を回避する必要がある
ビジネスフォンのモニタリング機能を導入する際は、従業員のプライバシーに十分な配慮が求められます。特に通話の録音や内容の確認といった行為は、監視と受け取られる可能性もあり、事前の丁寧な説明と同意が不可欠です。
あらかじめ就業規則や社内マニュアルにモニタリングの目的・対象範囲・運用方法を明記し、対象となる従業員には書面や研修を通じて内容を周知させることが大切です。録音データの取り扱いについても透明性を保ち、人事評価や処分に不当に使用しない方針を明文化しておくと、信頼関係を損なわずに運用できます。
対応機種かどうかを事前に確認する
モニタリング機能を導入する際は、現在使用しているビジネスフォンが対応機種かどうかを事前に確認しておくことが大切です。機種によってはモニタリングやウィスパリング、録音といった機能が非対応の場合があります。また、対応している機種であっても、オプションの機器や専用ソフトウェアが別途必要になるケースもあります。
同じメーカー製であってもモデルごとに仕様が異なることがあり、既存の電話機や主装置が対応していないと設定が煩雑になったり、機能が正しく動作しなかったりする可能性があります。特にクラウドPBXを導入する場合は、既存のビジネスフォンとの互換性も重要な確認ポイントです。
録音データやモニター情報は厳重に管理する必要がある
モニタリング機能を導入する際は、録音データやモニター情報の管理体制にも細心の注意を払う必要があります。通話には顧客の個人情報や機密性の高い業務内容が含まれる場合があり、管理が不十分だと情報漏洩や不正利用といったリスクにつながります。
特にクラウドPBXを活用するケースでは、録音データが外部サーバーに保存されることが多く、アクセス制限や暗号化といったセキュリティ対策が欠かせません。社内では閲覧権限を明確にし、担当者以外が不用意にアクセスできないよう体制を整えることが求められます。
また、録音データの保存期間についても社内ルールを設け、不要なデータは定期的に削除する運用が望まれます。モニタリングは業務改善に役立つ一方で、管理を怠ればトラブルの火種にもなりかねません。
【実践編】ビジネスフォンのモニタリング機能を活用するための設定手順
ビジネスフォンのモニタリング機能を導入する際は、正しく機能させるための初期設定が大切です。ここでは、モニタリング機能を活用するために必要な具体的な設定手順を、段階ごとに解説します。
1. モニタリング機能を主装置メニューで有効にする
モニタリング機能を活用するには、まずビジネスフォンの主装置メニューから該当機能を有効にする必要があります。主装置とは社内の電話機を一元管理する中枢装置で、ここでの設定によってモニタリングの可否や動作条件が決まります。
多くの機種では、主装置の設定画面で「モニタリングの許可」や「特番番号(例:77)」の有効化を行うことで、指定された内線間でモニタリング機能が使えるようになります。
2. 使用する電話機にモニタリング用ボタンを割り当てる
モニタリング機能をスムーズに活用するには、使用する電話機に専用ボタンを割り当てておくことが大切です。モニタリングを実行する電話機には、「モニター開始」や「聴話」などの操作をワンタッチで行えるよう、任意のファンクションキーに機能を設定します。多くのビジネスフォンでは、使用のキーを活用することで、直感的に操作できる仕組みになっています。
ボタン割り当ては、誤操作の防止や業務の効率化にも効果的です。
3. モニター・ウィスパーなどの動作モードを選択する
モニタリング機能を効果的に活用するには、目的に応じた「動作モード」の選択が重要です。ビジネスフォンでは、「モニター」、「ウィスパー」、「バージイン」など、用途に応じた複数のモードが用意されています。
これらのモードは、ビジネスフォンの機種やシステム設定によって選択・切り替えができます。業務フローや教育体制に応じて最適なモードを設定しましょう。
4. 通話対象の内線番号やグループを指定する
モニタリング機能を効果的に活用するには、あらかじめ対象となる内線番号や内線グループを設定しておく必要があります。どの通話を誰が確認できるのかを明確にすることで、管理の透明性と操作の正確性が保たれます。
たとえば新人オペレーターの対応を重点的に確認したい場合は、その内線番号を主装置で登録しておくことで、選別的なモニタリングが可能になります。グループ単位での設定にも対応している機種であれば、部署全体の通話を一括で確認したいときにも便利です。
また、機種によってはモニタリングを行う側が内線番号を直接入力して聴取する方式のほか、モニターされる側が許可操作を行う設定になっているものもあります。どちらの方式でも、事前に対象内線を正しく設定しておくことで、意図しないモニタリングや情報漏洩のリスクを防ぐことができます。
5. 設定完了後にテスト通話で動作確認を行う
モニタリング機能の設定が完了したら必ずテスト通話を実施し、正しく動作しているかを確認しましょう。実際の運用に入る前に、不具合や操作ミスがないかをチェックしておくことで、後のトラブルを未然に防げます。
たとえば通話中の電話機で特番(例:「77」)を押し、別の電話機からモニタリング対象の通話内容が聞こえるかを確かめます。あわせて、モニタリング許可の設定や、許可の取り消し操作(例:「*」キー)が適切に反映されているかも確認すると安心です。
この工程を省略してしまうと、「モニタリングができない」、「誤作動が起きる」といった不具合の原因になります。複数の電話機を使って異なるパターンで検証しておくと、より実際の運用に近いチェックが可能です。
自社に合ったモニタリング方法を選ぼう
モニタリング機能はビジネスフォンを活用した教育・品質管理・リスク対策において非常に効果的な機能です。モニター・ウィスパー・バージインといった機能をうまく組み合わせることで、新人の育成からクレーム対応、組織全体の応対品質の底上げまで幅広く対応できます。
また、クラウドPBXを活用すれば場所に縛られず柔軟なマネジメントも可能になります。一方で、設定や運用にあたってはプライバシー配慮やセキュリティ対策が欠かせません。導入前に目的や体制を整理し、業務に合った方法を選ぶことが効果的な活用につながります。自社のニーズに応じて最適なモニタリング体制を構築していきましょう。