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業務用電話システムを見直す際、多くの企業が直面するのが「ビジネスフォン」と「IP電話」のどちらを選ぶべきかという問題です。それぞれに異なるメリット・デメリットがあり、コストや通話品質、導入・運用のしやすさにも大きな違いがあります。
そこで今回は両者の仕組みや機能、導入事例を比較しながら自社にとって最適な選択肢を見極めるための判断基準を詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスフォンとIP電話の違いとは?
ビジネスフォンとIP電話はどちらも企業向けの電話システムですが、仕組みや導入コスト、運用方法に大きな違いがあります。ビジネスフォンは主装置を軸とした安定した通話品質と多機能性が魅力で、従来型のオフィス運用に適しています。
一方IP電話はインターネット回線を活用することでコストを抑えつつ、柔軟な働き方にも対応できる点が特徴です。まずはそれぞれの基本的な仕組みから見ていきましょう。
ビジネスフォンとは?
ビジネスフォンとは企業やオフィスでの利用を前提に設計された業務用の電話システムです。一般的な家庭用電話とは異なり、複数回線や複数台の電話機を主装置(PBX)によって一括管理することで、内線通話や外線の共有、保留・転送・代表番号の着信振り分けなど、業務に特化した機能を実現します。
さらに、フロアや部署をまたいだ内線通話により、社内の連携を円滑に進められる点も大きな特長です。多くの機種は音声品質や通話の安定性に優れており、取引先との通話でも安心感のある対応が可能となります。導入には専用の機器や配線工事が必要になりますが、長年にわたり企業の電話業務を支えるインフラとして活用されています。
IP電話とは?
IP電話とはインターネット回線を使って音声通話を行う電話システムのことを指します。従来の電話回線ではなく、IP(Internet Protocol)を通じて音声データを送受信する仕組みであるため、「VoIP(Voice over IP)」とも呼ばれています。
専用のIP電話機のほか、PCやスマートフォンにアプリを導入するだけでも利用可能で、物理的な配線や機器が最小限に抑えられる点が特徴です。通話料金が安価なうえ、拠点間や長距離間での通話が無料または定額になることもあり、中小企業にとってはコスト面での利点が大きいといえます。
ただし、インターネット環境に依存するため、通信の安定性や停電時の通話継続には注意が必要です。
ビジネスフォンのメリット・デメリット
ビジネスフォンは企業の業務効率や対外対応を支える重要な通信インフラです。しかし導入にあたってはメリットだけでなくコストや柔軟性といった課題面も踏まえた比較が欠かせません。ここでは、ビジネスフォンの代表的な利点と注意すべきデメリットをわかりやすく整理し、自社に合った導入判断の参考となる情報を提供します。
ビジネスフォンのメリット
ここでは、高音質な通話をはじめ、内線・転送・保留などの多機能性、複数回線・端末への対応力、そして信頼性の高い固定番号運用などビジネスフォンならではの代表的なメリットを詳しく紹介します。
高音質な通話で業務効率が向上する
ビジネスフォンは一般的なIP電話に比べて通話音質が安定しており、クリアな音声でやり取りが行えます。背景ノイズが入りにくく音声の遅延や途切れも少ないため、業務中の聞き間違いや確認の手間が減り、無駄なやり取りを抑えられる点が特徴です。
特に外部との商談や問い合わせ対応においては、相手にストレスを与えることなく、円滑なコミュニケーションを図れます。
内線・転送・保留など多機能で柔軟な対応が可能
ビジネスフォンには内線・転送・保留といった業務に欠かせない多彩な機能が標準で搭載されており、社内外とのスムーズなやり取りを支援します。たとえば部署間の内線通話によってフロアをまたぐ迅速な連携が可能となり、取次業務の負担を軽減できます。
さらに、通話を一時的に保留し、他の担当者へ転送する操作もワンタッチで行える機種が多く、業務の中断を最小限に抑えられます。代表番号への着信を担当者ごとに自動で振り分ける機能も備わっており、顧客対応の質の向上にもつながります。
これらの機能を活用することで、オフィス内の電話業務を効率化し、ミスやタイムロスの削減が見込めます。組織の規模や業種に合わせて柔軟に構成を変えられる点も、ビジネスフォンならではの大きな利点といえるでしょう。
複数回線・複数端末に対応しやすい
ビジネスフォンは複数の外線および内線回線を効率的に管理できるため、電話の取次ぎが多い企業や部署ごとに回線を分けたい場合にも柔軟に対応できます。主装置を中心に複数端末を一括管理する構成となっており、1つの代表番号に対して複数の電話機で同時に着信を受ける運用も可能です。
また、部署の拡大やレイアウト変更が発生した際にも主装置に空きポートがあれば端末の追加が容易で、最小限の作業で構成を変更できます。このように、将来的な業務規模の変化にも柔軟に対応しやすく、継続的な使いやすさを維持しやすい点も魅力です。
固定電話番号を用いた信頼感のある対応ができる
ビジネスフォンを導入すると地域に根ざした固定電話番号を取得できるため、顧客や取引先に対して安心感や信頼感を与えることが可能です。携帯番号や050番号と比べて、固定番号は企業の所在地や実在性が伝わりやすく、法人としての信頼性を示す手段としても有効です。
特に初回の問い合わせや見積もり依頼では固定番号からの発信が相手に好印象を与えやすく、商談や契約のスムーズな進行にもつながります。さらに、代表番号を複数の端末で共有し着信できる点も、ビジネスフォンならではの利便性といえるでしょう。
ビジネスフォンのデメリット
次に導入前に把握しておきたい主なデメリットについて解説します。
導入の初期費用が高額になりやすい
ビジネスフォンの導入には主装置や電話機といった専用機器のほか、配線工事や設置作業などの初期費用が発生します。特に新規導入や大規模な入れ替えを行う場合には、数十万円から百万円規模のコストがかかることもあり、中小企業にとっては大きな負担となる可能性があります。
さらに、内線数や回線数が増えるにつれて構成は複雑化し、それにともないコストも上昇する傾向にあります。加えて、運用開始前には設定作業やユーザー教育といった目に見えにくい準備も必要です。こうした点を踏まえると、導入効果が高い一方で、初期投資をどのように回収するかが重要な検討課題となります。費用対効果を見極めながら、必要な機能に絞った計画的な導入が求められます。
操作や設定が複雑で誤操作のリスクがある
ビジネスフォンは多機能である反面、操作や設定が複雑になりやすいという課題も抱えています。たとえば内線の振り分けや着信グループの設定、転送機能のカスタマイズには専門知識が求められる場面も多く、初期導入や構成変更の際に戸惑うことがあります。
加えて、機種やメーカーによって操作体系が異なるため、ユーザー教育が不十分だと誤操作や対応ミスにつながりやすく、結果として業務に支障をきたす可能性も否定できません。特に小規模企業ではシステム担当者が常駐していないこともあり、トラブル時の即時対応が難しくなるケースもあります。
スムーズな運用を実現するためには、操作性に優れた機種を選ぶことに加え、導入時に手厚いサポート体制を確保することも重要です。
専用機器や配線工事が必要になる
ビジネスフォンを導入する際には、主装置(PBX)や専用の電話機といったハードウェアに加えて、専門業者による配線工事が必要となります。特にオフィス内のレイアウトが複雑で複数のフロアにまたがる場合には、配線距離の確保や設置位置の調整が必要になり、工事の手間や費用がかさむこともあります。
また、LAN配線とは異なる専用の電話線を敷設するケースも多く、設備面での制約を受ける可能性も否定できません。工事中は一時的に業務に支障が出るおそれがあるため、導入スケジュールの管理にも細心の注意が求められます。柔軟な働き方や迅速なレイアウト変更を重視する企業にとってはこうした物理的な制限が導入のハードルとなる場合もあるでしょう。
拡張や柔軟な変更にコストと時間がかかる
ビジネスフォンは安定した運用が可能である一方、後からの拡張や構成変更にはコストと時間を要する点に留意が必要です。たとえば増員や部署異動にともなって電話機を追加したり内線設定を見直したりする際には、主装置の拡張性や既存配線の対応可否を確認しなければなりません。必要に応じて再工事や設定変更が発生することもあります。
これらの作業は専門業者に依頼する必要があり、対応から完了までに数日から数週間かかるケースもあります。さらに、変更の内容によっては部材費や技術料が別途かかり、想定以上の費用負担となることもあるため、事前の見積もり取得とスケジュール管理が重要です。
IP電話のメリット・デメリット
IP電話はコスト削減や柔軟な運用を実現できる一方で、ネット環境への依存や緊急対応の制約といった課題もあります。ここではIP電話の代表的なメリットとデメリットを具体的に紹介します。
IP電話のメリット
まずは、IP電話の代表的なメリットを具体的に紹介していきます。
通話料金を大幅に削減できる
IP電話の大きな魅力の1つは通話料金を大幅に抑えられる点にあります。従来の固定電話では通話距離に応じて料金が高くなる傾向がありますが、IP電話はインターネット回線を活用するため、全国どこへでも定額または無料で通話できるケースが多く見られます。
特に拠点間通話の多い企業や遠方の取引先と頻繁に連絡を取る場合には、通信コストの削減効果が顕著です。さらに、スマートフォンやPCを使えば外出先からでも同一番号で発着信でき、モバイル通話にかかる費用も抑えられます。初期費用や月額利用料を含めても、トータルではビジネスフォンより安価になる場合が多く、限られた予算内で通信環境を整えたい中小企業にとっては、非常に魅力的な選択肢といえるでしょう。
スマホ・PCでも利用可能で柔軟な働き方に対応が可能
IP電話はスマートフォンやPCに専用アプリをインストールするだけで、社内の電話番号を使った発着信が可能になります。固定電話機に縛られず、外出先や自宅でも業務用の通話が行えるため、テレワークやフリーアドレス制を導入している企業にとっては非常に有効です。
さらに、VPNやクラウドPBXと組み合わせることで、拠点の場所を問わず柔軟な通話環境を構築できます。スマートフォン1台で内線と外線を一元管理できるため、電話対応の属人化も防止しやすくなります。
拠点間通話や遠距離通話が無料または定額
IP電話はインターネットを経由して通話を行うため、物理的な距離に関係なく拠点間や遠隔地との通話料金を大幅に抑えることが可能です。多くのIP電話サービスでは同一アカウント内の通話が無料、もしくは月額の定額制で提供されており、支店や在宅勤務者とのやり取りにかかる通信費の削減に直結します。
このような環境が整えば、本社と支社間での会議や業務連絡もコストを気にせず頻繁に実施できるようになり、社内の連携力や意思決定のスピードも向上します。特に複数拠点を持つ中小企業にとっては、運用コストの最適化と業務効率の向上を同時に実現できる有力な手段といえるでしょう。
クラウドPBXとの連携で拡張性が高い
IP電話はクラウドPBXと連携することで、従来の電話システムでは実現が難しかった柔軟な拡張性を可能にします。クラウドPBXはインターネット上に電話交換機能を持たせる仕組みで、オフィスに専用機器を設置せずとも、新たな回線や内線の追加が行えます。
これにより部署の増設やリモートワーク人員の増加にも即座に対応でき、急な組織変更や事業拡大の場面でも通信インフラがボトルネックになることはありません。さらに、拠点ごとの設備環境に依存せず、どこからでも同じ内線番号で接続できるため、全国展開を視野に入れる中小企業にとっても有効な手段といえます。こうした柔軟な連携体制を整えやすい点は、IP電話の大きな強みです。
IP電話のデメリット
次に、IP電話を導入する前に確認しておきたい代表的なデメリットを紹介します。
停電時には使用できないリスクがある
IP電話はインターネット回線を利用して通話を行う仕組みであるため、電源の供給が途絶えると通信機器やルーターも停止し、通話ができなくなるリスクがあります。従来のアナログ回線を使う固定電話では、停電時でも最低限の通話が可能なケースが多いのに対し、IP電話は電源やネットワーク機器に依存しているため、災害時やトラブル発生時の連絡手段としてはやや不安が残ります。
特に重要な業務や緊急対応を担う部門では、バックアップ回線やモバイル通信の併用、無停電電源装置(UPS)の導入といった備えを事前に講じておくことが欠かせません。こうしたリスクを正しく理解したうえで、BCP(事業継続計画)の観点からも運用の見直しを行うことが求められます。
インターネット環境の影響を受けやすい
ビジネスフォン子機の交換方法と費用相場
IP電話はインターネット回線を利用して通話を行うため、通信環境の安定性がそのまま通話品質に大きく影響します。例えば、回線速度が遅い場合やルーターの処理能力が不足している場合、また社内ネットワークが混雑している場合には、音声の遅延や通話の途切れといったトラブルが発生しやすくなります。
こうした状況が続くと、顧客対応や社内連携に支障をきたすおそれもあるため、安定したインターネット環境の整備は欠かせません。特に重要な通話が多い業務では、IP電話単体での運用にこだわらず、有線接続やQoS(通信優先制御)機能の導入も視野に入れるべきでしょう。導入前には現状の通信環境をしっかり確認したうえで、必要な改善策を講じることが求められます。
音声品質がネット回線に左右される
IP電話はインターネットを通じて音声データを送受信するため、回線の状況によって通話品質が大きく左右されます。たとえば通信速度が不安定だったり、帯域が逼迫していたりすると通話中に音が途切れたり、エコーやノイズが発生したりすることがあります。
その結果顧客との円滑な会話が妨げられ、業務全体の信頼性にも悪影響を及ぼすおそれがあります。特に重要な商談やクレーム対応といった場面では、聞き取りづらさが致命的な支障となることも想定されます。こうしたトラブルを防ぐためには、品質の高い光回線を利用するほか、ルーターの性能向上や通話トラフィックに優先順位を設けるQoS設定などが有効です。
緊急通報(110番・119番)ができない場合がある
IP電話は通常の通話機能を備えていますが、110番や119番といった緊急通報に対応していない、あるいは通報先に正しく接続されない場合があります。これはIP電話がインターネット経由で通話を行う特性上、発信場所の特定が難しくなることが一因とされています。
特にオフィス外からの発信やクラウドPBXと連携した環境では、通報が地域の適切な管轄機関へ届かないリスクも想定されます。災害発生時や急病人の対応が求められる場面では、大きな支障となりかねません。そのため、固定電話や携帯電話との併用など、緊急時の代替手段をあらかじめ準備しておくことが不可欠です。
IP電話を導入する際は、社内で緊急時の対応ルールを整備し、想定外の事態にも対応できる体制を構築しておくことが重要です。
IP電話・ビジネスフォンを選ぶ際のポイント
電話システムの選定においては単に機能や費用面だけでなく、自社の運用実態に適した方式を見極める視点が欠かせません。ここからはビジネスフォンとIP電話を比較するうえで押さえておきたい3つの視点「コストと通話品質のバランス」、「会社規模や業種との相性」、「拡張性と柔軟性」について詳しく解説していきます。
重視すべきはコストか通話品質かを明確にする
ビジネスフォンとIP電話のどちらを導入すべきかを判断する際には、まず「コストを重視するのか」、「通話品質を優先するのか」といった判断軸を明確にすることが重要です。IP電話は初期費用や通話料を抑えやすく、特に拠点間通話や在宅勤務が多い企業ではコストパフォーマンスの高さが際立ちます。
一方で、通信環境に影響されやすく、音声の途切れなど品質面でのリスクがともなう点には注意が必要です。対照的にビジネスフォンは安定した通話品質と多機能性に優れ、外部とのやり取りが頻繁な企業や信頼性を求められる業務に適していますが、導入・運用にかかるコストや手間が大きくなる傾向があります。
自社の規模・業種・働き方に合った方式を選ぶ
自社に最適な電話システムを選定するうえでは企業の規模や業種、働き方に合った方式を見極めることが重要です。たとえば来客対応や代表電話の取次ぎが頻繁に発生する企業では、安定した通話品質と多機能性を備えたビジネスフォンが適しています。
一方で複数拠点を展開していたり、リモートワークやフリーアドレス制を導入していたりする場合には、スマートフォンやPCからも通話できるIP電話の方が柔軟に対応しやすくなります。また、従業員数が少ない小規模オフィスでは、初期費用を抑えられるIP電話が有利となるケースも少なくありません。
反対に、社内に複数の部署があり取次ぎや内線通話の頻度が高い企業では、ビジネスフォンの方が業務効率を高めやすい傾向があります。
将来的な拡張性や運用の柔軟さも比較する
電話システムを導入する際には、現在の業務に適しているかだけでなく将来的な拡張性や運用の柔軟性にも目を向けることが重要です。たとえばビジネスフォンは主装置の仕様に依存しており、端末の追加や内線設定の変更には工事や再設定が必要になるため、時間やコストがかかりやすい傾向があります。
一方IP電話であればクラウドPBXと連携することで、機器の追加や設定変更をオンラインで完結できるケースが多く、増員やレイアウト変更にも柔軟に対応できます。また、働き方改革の推進や拠点の拡大といった将来的な変化を見据えて導入方式を選ぶことで、運用負荷の軽減やコストの最適化にもつながります。
ビジネスフォンとIP電話のどちらが自社に適してるかを把握しよう
ビジネスフォンとIP電話はそれぞれ特性や強みが異なるため、自社の業務環境や通話ニーズに合った選択が重要です。ここでは、導入の判断材料として「どのような企業にどちらの方式が適しているか」を具体的に整理します。
ビジネスフォンがおすすめの企業の特徴
ビジネスフォンは安定性や多機能性を重視する企業に適した電話システムです。特に以下のような業務環境で活用価値が高いといえます。
- 通話品質を重視し、商談や問い合わせ対応の信頼性を高めたい
- 来客対応や代表電話の取次ぎが多く、スムーズな電話対応が求められる
- 社内連携を強化するために、部署間の内線通話を活用している
これらの条件に当てはまる企業ではビジネスフォンの導入を前向きに検討するとよいでしょう。業務効率の向上や外部との信頼構築にもつながります。
IP電話がおすすめの企業の特徴
IP電話はコスト削減や柔軟な働き方を重視する企業にとって、導入しやすく実用性の高い選択肢です。特に以下のような特徴を持つ企業に適しています。
- 初期費用や通話料を抑え、限られた予算でも導入・維持しやすい
- スマホやPCから社内番号で通話ができ、場所にとらわれない運用が可能
- クラウドPBXと連携することで、組織の変化にも柔軟に対応できる
これらの条件に当てはまる場合はIP電話の導入を前向きに検討する価値があります。業務効率の向上と通信コストの最適化を同時に実現できるでしょう。
IP電話・ビジネスフォンの導入ステップ
自社に合った電話システムを選ぶには、比較検討だけでなく導入までの流れを正しく理解しておくことが重要です。ここからは導入前の準備からアフターサポートまで際の導入フローを5つのステップに分けて詳しく見ていきましょう。
STEP1|現在の通信環境と通話ニーズを明確にする
電話システムを選定する際にはまず自社の通信環境と通話ニーズを正確に把握することが大切です。現在使用している回線の種類(アナログ・デジタル・IP)やネットワーク設備の状況に加え、同時通話数や内線数、頻繁に利用する機能(転送・保留・代表着信など)を整理することで、必要なスペックや最適な方式が見えてきます。
さらに、在宅勤務や複数拠点での運用があるかどうかといった、働き方の多様性にも目を向けることが重要です。
STEP2|導入する機器やシステムの仕様を決める
信環境や通話ニーズの整理が終わったら、次は導入する電話システムの仕様を具体的に決めていきます。ビジネスフォンを選ぶ場合には必要な主装置の機能や内線・外線の数、子機の台数などを検討する必要があります。
一方でIP電話を導入する際は、クラウドPBXの対応範囲や利用予定の端末(PC・スマートフォン・IP電話機)の選定が重要になります。加えて、保留・転送・IVRといった必須機能の有無や音声品質の基準、将来的な拡張性、リモート対応の可否なども、仕様を決めるうえで欠かせない要素です。
業務フローやオフィスのレイアウトに合わせて機器構成を検討しておくことで、導入後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな運用につなげることができます。
STEP3|複数の業者から見積もりを取り比較する
システムの仕様が固まったら次は複数の業者から見積もりを取り、内容を比較検討しましょう。比較の際には費用だけでなく、提案の妥当性やサポート体制、導入実績の有無なども確認することが大切です。
特にビジネスフォンとIP電話では構成や対応範囲に違いが出やすいため、同一条件で見積もりを依頼することが比較の精度を高めるポイントになります。また、保守契約の有無やアフターサポートの内容についても評価の対象とし、長期的な運用コストまで視野に入れて判断を行うことが求められます。
提示された内容に不明点がある場合は、遠慮せず業者に質問し、納得できるプランかどうかを慎重に見極めていく姿勢が重要です。
STEP4|設置・設定と運用開始までのスケジュールを立てる
業者の選定と契約が完了したら、次は設置から運用開始までのスケジュールを具体的に組み立てる段階に入ります。工事や設定作業には数日から数週間を要することもあるため、業務への影響を最小限に抑えるための適切なタイミングを見極めて計画を立てることが重要です。
ビジネスフォンの場合は配線工事や主装置の設置日、内線の設定作業などが必要になります。一方、IP電話を導入する際は、ネットワーク構成の確認やアプリ設定、クラウドPBXとの接続調整が中心となります。
また、導入前には試験運用や操作研修の期間を設けておくと実際の業務開始時にも安心です。加えて万が一トラブルが発生した際に備え、一次対応のフローを事前に整備しておくことでスムーズな立ち上げが可能になります。
STEP5|導入後の保守サポート体制を確認する
電話システムを安定して運用し続けるためには、導入後の保守サポート体制を事前に確認しておくことが不可欠です。万が一トラブルや故障が発生した際に迅速な対応が可能な体制が整っているかどうかが、長期的な運用の安心感に直結します。 特にビジネスフォンは専用機器や配線が関係するため、復旧に時間がかかるケースも考えられます。契約時には障害発生時の対応時間、リモートサポートの可否、交換部品の対応範囲といった条件も確認しておくと安心です。
一方、IP電話がクラウド型の場合は、ベンダーのサポート品質や対応窓口のスピードも比較検討のポイントになります。運用中の不具合や設定変更に柔軟に対応できる体制が整っていれば、継続的な安定運用にもつながります。導入前には保守内容とその対応レベルを明確にし、自社に合ったサポート体制を選ぶことが重要です。
IP電話・ビジネスフォンの導入に失敗しないための注意点
IP電話やビジネスフォンを導入する際は、単にコストや機能面での比較だけでなくインフラ環境や災害時の対応力といった運用リスクにも目を向ける必要があります。ここからは導入時に見落としがちなインフラ環境の確認や、停電・災害リスクへの備えについて詳しく解説します。
インフラ(回線・ネットワーク)の確認
IP電話やクラウドPBXを導入する際は、既存の通信インフラが対応できるかどうかを事前に確認することが欠かせません。特にIP電話ではインターネット回線の速度や安定性が通話品質に直結するため、通信環境のチェックが非常に重要です。速度が遅かったりネットワークが混雑していたりすると、音声の遅延や途切れが発生するおそれがあります。
また、ビジネスフォンを導入する場合でも、光回線やデジタル回線の有無が構成に影響を及ぼすことがあるため、使用中の回線種別や契約内容、さらにルーターやハブなどの機器性能を事前に洗い出しておく必要があります。QoS(通信優先制御)設定や回線の増強も視野に入れながら、最適な通信環境を整えることでスムーズな運用が期待できます。
停電・災害時のリスク対策
停電や災害時に備えたリスク対策は電話システムを選定する際に欠かせない視点の1つです。特にIP電話は、電源やインターネット接続が不可欠であるため、停電時に通話ができなくなるリスクがともないます。あらかじめ無停電電源装置(UPS)や予備バッテリーの導入、モバイル回線との冗長化を検討しておくと、非常時にも安心です。
一方で、アナログ回線を併用できるビジネスフォンであれば最低限の通話機能を維持できるケースもあります。また、緊急時の連絡手段や社内対応マニュアルを平時から整備しておくことで、トラブル時の混乱を最小限に抑えることが可能です。
BCP(事業継続計画)の観点からも、災害時や障害発生時に通信機能を確保できる体制を構築しておくことが重要です。
自社に合った電話システムを選ぼう
ビジネスフォンとIP電話にはそれぞれ異なる特性とメリット・デメリットがあります。通話品質の安定性や多機能性を重視するならビジネスフォン、コスト削減や柔軟な運用を求めるならIP電話が適しているでしょう。導入を検討する際は企業の規模や働き方、通信インフラの状況、将来的な拡張性など、複数の観点から慎重に比較することが重要です。
また、導入前には通信環境の確認や見積もり比較、設置スケジュール、保守体制の把握など具体的なステップを踏んで計画的に進めることで、失敗のリスクを回避できます。自社の業務スタイルや成長戦略に合った電話システムを選定し、円滑なコミュニケーション環境を整えていきましょう。