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オフィスの通信環境は、業務の効率性や信頼性を左右する重要な要素です。なかでも「saxa(サクサ)」のビジネスフォンは、長年にわたり中小企業を中心に高い評価を得てきました。しかし一方で、「旧モデルと現行機の違いがわからない」、「どの世代の機種が自社に適しているのか判断が難しい」と悩む方も少なくありません。
そこで今回は、saxaのビジネスフォンが歩んできた歴史と各年代の代表モデルを比較しながら、導入検討時の判断材料をわかりやすく解説します。通信設備の見直しや機器の入れ替えを検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
saxaの歩みとビジネスフォン事業の展開
saxaは、戦後の通信機器業界を牽引してきた2社の統合を経て誕生し、長年にわたりビジネスフォンの分野で技術革新を続けてきました。ここでは、saxaの成り立ちとビジネスフォン事業の進化を振り返ります。
saxaの前身は田村電機と大興電機の統合からスタート
saxaの起源は戦後の通信機器業界を支えてきた田村電機製作所と大興電機製作所の2社にさかのぼります。大興電機は1938年、田村電機は1946年に創業し、公衆電話機やキーテレホンの開発・製造によって成長を遂げました。両社はそれぞれ東京証券取引所に上場し、業界内で確かな地位を築きながら事業を拡大していきます。
2004年には持株会社「田村大興ホールディングス」が設立され、同年4月に両社の統合によって「サクサ株式会社」が誕生しました。この統合により開発力・製造力・販売網が一体となり、saxaはビジネスフォンを中心としたネットワーク機器メーカーとしての歩みを本格化させています。
2004年、SAXAホールディングスが誕生
2004年、田村電機製作所と大興電機製作所が経営統合し、同年2月に「田村大興ホールディングス株式会社」が設立されました。そして4月には両社の事業を統合するかたちで「サクサ株式会社」が誕生しています。この統合により、通信機器やネットワーク分野で実績を持つ両社の技術と開発力が結集され、競争力のある製品開発と事業展開が可能となりました。
創業当初からIP電話機「IP NETPHONE S」や、スリムでコンパクトなビジネスホン「Actys」シリーズの販売が始まり、革新性の高い製品を次々と投入しています。さらに、同年10月には物流拠点の再編も実施され、グループ全体としての機能強化が進められました
ネットワーク機器メーカーとしての事業領域拡大
saxaはビジネスフォンの分野で成長を遂げる一方、2000年代以降はネットワーク機器メーカーとしての地位を確立するべく事業領域を大きく広げてきました。2006年にはビジネスフォンと連携するネットワークメディアサーバを搭載した「ビジネスメディアシステム」を発売。その後はUTM(統合脅威管理)やVPNルーター、ネットワーク対応のセキュリティ機器など、多彩な製品を展開しています。
さらに近年では「SAXA-DXサービスプラットフォーム」に代表されるクラウドサービスにも注力し、映像監視やアクセス管理といったDX領域にも進出しました。こうした取り組みによってsaxaは電話機メーカーの枠を超え、セキュリティやネットワークに強みを持つトータルソリューション企業へと進化を遂げています。
saxaの年代別代表機種と特徴比較
saxaは長年にわたり多様なビジネスニーズに応える電話機シリーズを展開してきました。ここでは年代ごとに代表的なシリーズとその特長を比較して紹介します。
2000年代:Actysシリーズ(XT300)で小規模オフィスに対応
2000年代に登場したActysシリーズ(代表機種:XT300)は、saxaが中小規模オフィス向けに展開したビジネスフォンの先駆けとして位置づけられます。なかでもXT300はコンパクトな筐体に必要な機能を凝縮した設計により、小規模事業者のニーズに的確に応えました。省スペース性と操作性を兼ね備え、将来的な機能拡張にも柔軟に対応できる構成となっていた点が高く評価されています。
また、saxaブランドの統一展開が始まった時期と重なるため、後のRegalisやAGREAといったシリーズ展開の基盤にもなりました。通信インフラのIP化が進み始めた当時、アナログとデジタルの橋渡し役としてActysシリーズは重要な役割を果たしたといえるでしょう。
2010年代前半:AGREA HM700シリーズが標準機能を強化
2010年代前半に登場した「AGREA HM700」シリーズは、中小規模オフィス向けに最適化されたsaxaの代表的なビジネスフォンの1つです。IP対応の通信機能に加え、人感センサの標準装備やセキュリティ連携機能の充実など、従来モデルと比べて標準機能が大きく強化されました。
これにより単なる通信機器としての役割を超え、防犯や安全管理までを包括する統合型オフィスソリューションとして注目を集めています。さらに、省スペース化と操作性を両立させた洗練されたデザインも魅力とされ、実用性と見た目を兼ね備えたモデルとして高い評価を受けています。
2010年代後半:Regalis UT700シリーズで拡張性とセキュリティ強化
2010年代後半、saxaは中小規模事業所向けに「Regalis UT700シリーズ」を展開し、ビジネスフォンにおける拡張性とセキュリティ機能を大幅に高めました。従来機種と比べてUT700シリーズは内線・外線の増設が柔軟に行える設計となっており、オフィスの成長やレイアウト変更にも対応しやすくなっています。
さらに、情報漏えいリスクを抑えるセキュリティ機能の充実や、IPネットワークとの連携による利便性の向上にも取り組んでおり、安心かつ効率的な通信環境の構築が可能です。多様化する働き方や厳格化するセキュリティ要件にも対応できる点が評価され、UT700シリーズは多くの企業から支持を集めています。
2020年以降:Astral GT500シリーズがクラウド・IP電話に対応
2020年以降に登場した「Astral GT500シリーズ」は、saxaがクラウド対応型ビジネスフォンへと本格的に移行する第一歩となったモデルです。従来の構内交換機(PBX)に加え、クラウドサービスとの親和性を高める設計が採用されており、IP電話やSIP端末との連携もスムーズに行えます。
リモートワークや拠点間通話の需要が高まった時代背景に応えるかたちで、柔軟かつ高機能なコミュニケーション基盤の提供を実現しました。さらに、セキュリティ面ではUTMなどのネットワーク機器との連携も前提としており、より強固な構成が可能です。段階的な移行にも対応しやすいため、中小企業でも無理なく導入できる点が魅力となっています。クラウド活用と通信インフラの刷新を同時に進めたい企業に選ばれているシリーズです。
2023年以降:MTシリーズ(MT100bm・MT200sx)の最新トレンド
2023年以降saxaは「MT100bm」および「MT200sx」を中心にMTシリーズを展開し、最新トレンドを反映したビジネスフォンの進化を続けています。これらのモデルは省スペース設計と操作性の両立を図りつつ、クラウド連携やIP通信への対応力も強化されています。
テレワークやフリーアドレスなど、多様化する働き方にもしなやかに対応可能です。また、主装置やスタンドに再生プラスチック材を採用することで、環境負荷の軽減にも取り組んでいます。直感的な操作が可能なインターフェースや柔軟な構成は、成長段階にある中小企業にとって導入しやすく、運用面でも利便性が高いと評価されています。MTシリーズは、機能性と柔軟性を兼ね備えた次世代ビジネスフォンの代表格といえるでしょう。
他社製品との違い|saxaが選ばれる理由とは
数あるビジネスフォンメーカーの中でも、saxaが多くの企業に選ばれているのには明確な理由があります。ここではsaxa製品が他社製品とどう違うのか、その魅力と選ばれる理由を詳しく解説します。
saxa製品が選ばれる理由は「標準装備の充実度」
saxaのビジネスフォンが長年にわたって多くの企業から支持されている理由の1つに、「標準装備の充実度」が挙げられます。多くのモデルで、録音機能・電話帳共有・転送・内線通話・外線同時通話といった業務に欠かせない機能が初期状態から搭載されており、追加オプションを使わずに基本業務を網羅できる点が特長です。
たとえば近年のMTシリーズではクラウド連携や省エネ対応、セキュリティ強化などのトレンド機能も標準装備となっており、導入直後からフルスペックで活用できます。こうした「すぐに使える安心感」と「必要十分な機能性」は、コストパフォーマンスを重視する企業にとって大きな魅力です。他社製品と比べても標準機能の豊富さは際立っており、設定や機器追加の手間を軽減できる点も評価されています。
他社メーカーとの違いは拡張性と柔軟性にあり
saxaのビジネスフォンは、他社製品と比較して拡張性と柔軟性に優れている点が大きな特長です。たとえば1台の主装置で少人数の事務所から大規模オフィスまで対応可能なスケーラビリティを備えており、事業の成長に合わせた無理のない運用が実現できます。
さらにIP電話やクラウドサービスとの連携、スマートフォンの内線化など通信環境の変化にも柔軟に対応できます。加えて、セキュリティ機器やネットワーク製品との連携を前提とした設計により、オフィス全体のICTインフラを一元的に管理することも可能です。
saxaがOEM供給を行う理由
saxaは自社ブランド製品の開発・販売にとどまらず、他社ブランド向けに製品を供給するOEM事業にも力を入れています。ここでは、saxaがOEM供給を行う主な理由について詳しく解説します。
自社の生産設備と技術力を最大限に活用するため
saxaがOEM供給を行う理由の1つは、自社の高度な生産設備と技術力を最大限に活かすためです。長年にわたり培ってきた通信機器の開発・製造ノウハウは、ビジネスフォンをはじめとする多様な製品群に反映されており、国内外で高い信頼を得ています。
この実績ある製造体制を自社ブランド製品だけでなく、他社ブランド製品の供給にも展開することで、設備の稼働率を最適化し、技術資産の有効活用にもつなげています。また、製品ごとに異なる仕様やニーズにも柔軟に対応できる体制が整っており、品質と生産スピードの両立を実現しています。
製品供給によって安定した収益基盤を確保するため
saxaがOEM供給を行う大きな理由の1つに、安定した収益基盤の確保があります。自社ブランド製品のみでは市場動向や競争状況によって売上が左右されやすく、一定のリスクを伴います。そこで、他社ブランド向けにも製品を提供することで販売チャネルを多様化し、収益源の分散を実現しています。
この戦略は、saxaが長年にわたり培ってきた技術力と製造品質があってこそ可能となるものです。大手通信事業者や機器メーカーとの継続的な取引を通じて、安定的な需要の確保と経営の強化にもつながっています。
他社ブランドを通じて市場シェアを拡大するため
saxaがOEM供給を積極的に行っている理由の1つは、自社ブランドだけでは届かない市場にも製品を展開し、市場シェアの拡大を図るためです。ビジネスフォン市場は業界ごとにニーズや購買チャネルが異なるため、他社ブランドとの提携を通じてsaxa製品の技術力や品質を活かしつつ新たな販路を開拓することが可能になります。
このアプローチにより、自社ブランドを採用しない層に対しても製造面から関与でき、結果的に市場全体でのプレゼンス向上につながっています。実際には複数の大手通信機器メーカーへのOEM提供実績があり、それらのブランド経由で安定的な受注と収益を確保。saxaは自社の強みを活かしながら、戦略的に市場への浸透を進めている点が特長といえるでしょう。
顧客ニーズに柔軟に対応し販路を広げるため
saxaがOEM供給を積極的に行う理由の1つに多様化する顧客ニーズへの柔軟な対応があります。企業によって求める機能やブランド価値は異なるため、自社ブランドだけでは対応しきれないニーズに対し、他社ブランドを通じた製品提供が有効な手段となります。
OEM供給によって既存のパートナー企業が持つ販売チャネルや顧客基盤を活かしながら、より広範な市場にsaxaの技術力を届けることが可能です。たとえば特定業種や大規模案件に合わせてカスタマイズされた機種を提供することで、利用環境に適した最適なソリューションを実現しています。
自社ブランド以外でも製造力を活かして収益を得るため
saxaは自社ブランド製品の展開に加え、OEM供給を通じて安定的な収益も確保しています。長年にわたって培った製造技術や品質管理体制を活用し、他社ブランド製品の開発・生産を担うことで、生産リソースを最大限に活用しています。
この仕組みにより、需要の変動や市場環境の変化にも柔軟に対応しやすくなり、事業の安定化につながっています。さらに、OEM供給を通じて外部パートナーとの関係強化も図ることができ、信頼性の高いモノづくりの基盤が構築されています。製造のみならず企画や設計段階からの対応も可能な体制を整えることで、多方面からの収益機会を創出している点も大きな特長といえるでしょう。
saxaビジネスフォンの導入が向いている企業とは?
saxaのビジネスフォンは成長途中の中小企業から多拠点展開を行う中堅企業まで、幅広いニーズに応える設計となっています。特に、限られた予算内で機能性を重視したい企業や、将来的な拡張を見据えた柔軟な構成を求める事業所にとって適した選択肢といえるでしょう。
さらに、クラウド連携やスマートフォンの内線化など、近年の働き方改革に対応した機能も標準装備されており、テレワーク導入を検討する企業にも向いています。また、オフィスのセキュリティ対策やネットワークインフラの管理を一元化したい場合にも、saxaの豊富な周辺機器は大きな強みとなります。シンプルな構成から本格的な通信基盤まで段階的に導入できる柔軟性も備えており、自社の成長フェーズに応じた最適な通信環境を構築したい企業におすすめです。
saxaの歴史を踏まえて、自社に最適なモデルを選ぼう
saxaのビジネスフォンは創業以来の技術革新と多様な製品展開により、幅広い業種・業態の通信ニーズに応えてきました。各年代の代表モデルには、それぞれの時代背景に合った特徴が備わっており、どの機種を選ぶかによって、導入後の運用効率や拡張性に大きく影響します。特に近年はクラウド対応やセキュリティ機能の強化が進んでおり、テレワークやICT環境の整備にも対応しやすくなっています。
自社の業務環境や成長フェーズを踏まえ、必要な機能と将来性を見極めながら、最適なモデルを選定していきましょう。