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ビジネスフォンの導入やリプレースを検討する際、メーカー選びは慎重に行いたいポイントの1つです。なかでも「岩通(IWATSU)」は、長年にわたり日本の通信インフラを支えてきた信頼の老舗メーカーとして知られています。しかし、岩通のビジネスフォンがどのような歴史を持ち、どのような特徴や進化を遂げてきたのか、詳しく把握している方は多くありません。
そこで今回は、岩通のビジネスフォンの歴史や代表的な機種の変遷、選ばれる理由までをわかりやすく紹介します。導入済み製品のサポート可否や他社製品との違いに悩んでいる担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
岩通ビジネスフォンの歴史と開発の歩み
岩通(岩崎通信機株式会社)は1938年の創業以来、日本の通信技術とともに歩んできた老舗メーカーです。ここでは、岩通ビジネスフォンの進化と技術開発の歩みを時代ごとに振り返ります。
創業と岩崎清一による企業の立ち上げ(1938年〜)
1938年、岩崎清一氏により東京市渋谷区代々木上原町に岩崎通信機株式会社が創業されました。創業当初は無線機器や通信装置の開発・製造を主軸に据え、短期間で技術力を高めていきます。戦前から通信インフラの重要性が増す中同社は国の要請に応じて成長を遂げ、1943年には杉並区久我山に本社および工場を新設しました。
翌年には電波警戒機第1号機を軍に納入し、防衛技術分野への進出も果たします。創業者である岩崎氏の先見性と技術開発への情熱が、岩通を通信機器メーカーとしての礎に導いたのです。
戦後復興と電話機開発への参入(1950〜60年代)
戦後復興が進んだ1950年代、岩崎通信機は本格的に電話機の開発へと乗り出しました。1951年には「4号電話機」を電気通信省に納入し、通信インフラの再整備に貢献しています。続いて1959年には日本電信電話公社向けに「1号ボタン電話装置」を、1963年には「600形電話機」をそれぞれ納入し、国の通信網を支える重要な役割を果たしました。
さらに1954年には日本初となるトリガ式オシロスコープの開発にも成功し、電子計測分野にも参入しています。これらの成果は、後のビジネスフォン事業を支える技術的基盤となりました。
高度成長期における電子計測機器と通信機器の拡充(1970〜80年代)
1970年代から1980年代にかけて日本全体が高度経済成長を遂げる中、岩崎通信機(現・岩通)も電子計測機器や通信機器の分野で事業を大きく広げました。1970年には福島岩通(現・福島事業所)を設立し、生産体制の強化と全国展開への基盤を築いています。
また、宇宙関連機器の計測・制御システムに参入し、1974年には岩通ソフトシステム株式会社を設立することで、ソフトウェア開発力の強化にも取り組みました。さらに1984年にはストレージスコープ用の高速蓄積管が科学技術庁長官賞を受賞し、同社の技術力が公的にも評価される成果を上げています。
ビジネスフォン事業の本格化とPBX製品の成長(1990年代〜)
1990年代以降、岩通はビジネスフォン事業を本格的に展開し、企業向け通信機器分野で存在感を高めていきました。PBX(構内交換機)製品の開発と提供を強化し、オフィスにおける通信インフラの中核を担うようになります。アナログからデジタルへの移行が進む中で、柔軟かつ多機能な通話制御が求められ、そのニーズに岩通の技術力が応えてきました。
また、1999年には国際品質規格ISO9001と環境規格ISO14001を取得し、品質と環境対応への信頼も獲得しています。
クラウド・IoT分野への展開と研究開発の強化(2010年代〜)
2010年代以降、岩通はクラウドやIoTといった次世代通信技術への対応を本格化させ、ビジネスフォンの機能拡張やソリューション開発に注力しました。ネットワークインフラの変化にともない、同社は従来のPBX型ビジネスフォンからIP・クラウド対応型へと主力製品を移行させていきます。
2013年には福島県にメガソーラー発電所を開設し、環境・エネルギー分野への取り組みも本格的に始動しました。さらに2016年にはグループ会社3社を統合し、情報通信・計測・サービス部門の連携強化と経営資源の集中を図っています。これにより、クラウド型コミュニケーションシステムやIoT対応機器の研究開発が加速し、より柔軟でスマートなビジネスフォン環境の提供が可能となりました。
年代別|代表的な岩通ビジネスフォン機種と特徴
岩通のビジネスフォンは時代ごとの技術革新やビジネスニーズに対応しながら、多彩な機種を展開してきました。ここでは、各年代の代表的な機種を取り上げ、それぞれの機能や特長についてわかりやすく解説していきます。
1990年代:TELEMOREシリーズに見るアナログ主流時代の完成形
1990年代はビジネスフォンにおけるアナログ技術が成熟し、安定性や操作性を重視した製品が数多く登場した時代です。岩通が展開した「TELEMORE(テレモア)」シリーズはその代表的な機種として高い評価を受けました。シンプルな構成と信頼性の高さを備え、主装置・電話機ともに堅牢な設計で長期運用にも対応しています。
このシリーズは中小規模のオフィスをはじめ、医療機関や教育施設など幅広い業種で導入が進み、岩通ブランドの信頼確立に貢献しました。転送・保留・内線呼び出しといった基本機能も過不足なく搭載されており、業務効率をしっかりと支える実用的な構成となっています。
2000年代前半:PRECOTシリーズが確立した中小規模オフィス向け主装置
2000年代前半、岩通は中小企業市場のニーズに応える主装置「PRECOT(プレコット)」シリーズを展開しました。従来のアナログ型から進化し、ISDNやひかり電話などのデジタル通信にも対応できる柔軟性を備えていた点が特長です。とくに中小規模オフィスに適した構成で省スペース性と拡張性を両しており、設置のしやすさやコストパフォーマンスの高さが評価されました。
さらに、操作性に優れた電話機UIや簡易留守録・転送といった実務向けの機能も充実しており、当時の業務現場に即した運用を実現しています。このPRECOTシリーズの成功を通じて、岩通は中小企業向けビジネスフォン市場での地位を確立し、後続モデルへの技術的な礎を築くことになりました。
2000年代後半:PRECOT-NEXT L/M/Sの登場と進化の分岐点
2000年代後半、岩通は「PRECOT-NEXT」シリーズ(L/M/S)の展開により、ビジネスフォンの多様なニーズに本格的に対応しました。Lは大規模、Mは中規模、Sは小規模オフィス向けに設計されており、規模に応じた最適な構成を選べる点が大きな特長です。業種や業態にあわせて柔軟に導入できるため、幅広いビジネス環境に対応してきました。
このシリーズでは基本機能の強化に加え、VoIP技術やコードレス端末との連携も進められました。省配線化やレイアウトの自由度向上にも寄与し、オフィス環境の最適化に貢献しています。その結果、岩通のビジネスフォンはアナログからデジタル、さらにIP対応への過渡期を象徴する存在となりました。PRECOT-NEXTは、次世代モデルの土台となると同時に、企業の通信インフラの変革を支える重要な役割を担ったといえるでしょう。
2010年代:Frespec・ActetoⅡなどIP・コードレス対応の加速
2010年代に入ると、ビジネスの通信環境は急速にIP化・無線化が進み、岩通もこの流れに対応した製品展開を強化していきました。なかでも注目を集めたのが、「Frespec」シリーズや「ActetoⅡ」など、IP電話対応やコードレス運用を重視したモデルです。これらの製品は従来の主装置をベースにしながらも、LAN配線への対応や無線端末との連携機能を拡充し、柔軟なオフィス運用を実現しました。
また、スマートフォンやタブレットとの接続性にも配慮した設計が進められ、社内外を問わずシームレスなコミュニケーション環境が整えられています。
2020年代:LEVANCIOシリーズの登場とクラウド・スマホ連携への対応
2020年代に入り、岩通は新たな主力機種として「LEVANCIO(レバンシオ)」シリーズを発表しました。クラウド環境の普及や働き方改革の加速を背景に、LEVANCIOはスマートフォン連携やクラウドサービスとの親和性を高めた設計が特長となっています。内線通話や外出先での着信応答をスマホで行えるほか、クラウドPBXやひかり電話との連携にも対応しており、柔軟で効率的なオフィスコミュニケーションの実現に貢献します。
また、従来のPBX型と比較して拡張性にも優れ、テレワークや拠点間通話といった多様なニーズにも柔軟に対応可能です。中小企業にとって導入しやすく、コストパフォーマンスにも優れていることから、次世代型ビジネスフォンとして注目を集めています。
岩通ビジネスフォンの評価ポイントと選ばれる理由
岩通のビジネスフォンは長年の技術蓄積と実績に裏打ちされた高い信頼性で、多くの法人に選ばれています。ここでは導入後の満足度にもつながる岩通製品の強みについて、評価ポイントごとに詳しく解説します。
耐久性と信頼性に優れた長寿命設計
岩通のビジネスフォンはその堅牢な設計と徹底した品質管理体制により、優れた耐久性と信頼性を備えています。もともと通信機器や電子計測機器で培った技術力を背景に、長時間の稼働を前提とした製品開発に注力してきました。オフィスやコールセンターなどでも安定稼働を維持してきた実績があり、多くの導入企業から高い信頼を得ています。
また、製品改良を継続的に行う一方で部品供給や保守対応にも力を入れており、長期運用が可能な体制を整えています。とくに中小企業にとっては、頻繁な買い替えが不要であることが大きな利点といえるでしょう。
中小企業に最適なコストパフォーマンス
岩通のビジネスフォンは高機能でありながら導入・運用コストを抑えられる点が評価され、中小企業から高い支持を集めています。主装置や端末のラインアップも豊富で必要最小限の構成からスタートし、事業の成長にあわせて柔軟に増設できる点も魅力の1つです。
また、IP対応やスマートフォン連携といった最新機能を備えながらも、過剰なスペックや不要なサービスは排除され、実用性を重視した設計が施されています。初期投資を抑えつつも業務効率の向上や通話コストの削減に貢献するため、導入後の運用面においても高い経済性を発揮します。
クラウド・スマート連携など最新ニーズにも対応
近年のビジネス環境ではクラウドの活用やスマートデバイスとの連携が、企業にとって重要な通信課題となっています。岩通のビジネスフォンはこうしたニーズにいち早く対応し、スマートフォンの内線化やクラウドPBXとの接続機能を備えた製品を展開してきました。
たとえば現行のLEVANCIOシリーズでは、社外からスマートフォンを使って内線通話が可能となっており、テレワークや外出先での業務効率化に貢献しています。さらに、ひかり電話やクラウド環境との連携にも対応しているため、拠点間通話や複数オフィスの一元管理も実現できます。
導入後も安心のサポート・保守体制
岩通のビジネスフォンは導入後のアフターサポートや保守体制にも定評があります。全国に広がる販売・サービスネットワークによって、トラブル発生時にも迅速な対応が可能です。さらに、専門スタッフによる保守契約や定期点検サービスも提供されており、突発的な不具合にも安定して対応できます。
また、旧機種に関するサポート期間や交換対応などの情報も丁寧に開示されており、製品のライフサイクルを見越した運用計画が立てやすい点も安心材料の1つです。こうした体制のもと、岩通のビジネスフォンは重要な通信インフラとして長期にわたって活用されており、初めての導入はもちろんリプレース時にも信頼できる存在として多くの法人に支持されています。
老舗メーカーならではの技術力と安定供給
1938年の創業以来岩通は日本の通信インフラとともに発展してきた老舗メーカーです。長年にわたって蓄積された通信技術や電子計測のノウハウを活かし、ビジネスフォンにおいても高い品質と技術力を維持してきました。製品開発から品質管理までを自社内で一貫して行っており、業務用機器に求められる安定性と信頼性を両立させています。
また、製品の長期供給と保守部品の継続提供により、企業の設備投資リスクを最小限に抑えられる点も大きな強みです。最新機種においてはクラウドやスマートフォン連携といった技術革新を積極的に取り入れながらも、堅実な製品づくりという姿勢を一貫して貫いています。
現在の主力機種「LEVANCIO」シリーズの特徴
近年のビジネス環境はテレワークやモバイル活用の拡大により、通信機器にも高い柔軟性と拡張性が求められています。ここではLEVANCIOの特長を詳しくご紹介します。
LEVANCIOとは?
LEVANCIO(レバンシオ)は、岩通が展開する最新世代のビジネスフォンシリーズであり、2020年代の多様化するワークスタイルに対応する主力機種として開発されました。従来のPBX機能に加えクラウド環境やスマートデバイスとの連携に優れており、テレワークや外出先での業務も円滑に行える柔軟性を備えています。
さらに、オフィスの規模やニーズに応じて多彩な機能を選択でき、小規模から中規模の事業所まで幅広く対応可能です。内線・外線通話の効率化に加えて、ひかり電話やIPネットワークとの親和性も高く、導入後の通信コスト削減にもつながります。
ひかり電話に対応
LEVANCIO(レバンシオ)シリーズは、NTT東日本・西日本が提供する「ひかり電話」に対応しており、IP網を活用したコスト効率の高い音声通話を実現します。従来のアナログ回線やISDNに比べて通話料を抑えられるほか配線の簡素化にもつながるため、とくに中小企業や多拠点を展開する法人にとって利便性の高い選択肢といえるでしょう。
また、LEVANCIOは「ひかり電話オフィスタイプ」や「ナンバー・ディスプレイ」、「転送電話サービス」などの主要オプションにも対応し、柔軟な運用を支えます。さらに、IP電話の品質やセキュリティ面にも十分配慮されており、通信環境を見直したい企業にとっても導入しやすいといえるでしょう。
スマートフォンとの連携で柔軟な運用が可能/
LEVANCIOシリーズはスマートフォンとシームレスに連携できる機能を備えており、オフィスの外でも社内と同様の通話環境を実現します。専用アプリをスマートフォンにインストールすれば、外出先からの内線通話や代表番号を使った発着信が可能となり、テレワークや営業活動の効率化に貢献します。
さらに、オフィスに設置された主装置とスマートフォンが連動することで、着信転送や留守番電話の確認といった業務も柔軟に運用できます。従来のビジネスフォンにスマートデバイスの利便性を加えた設計により、多様化する働き方や業務スタイルにも的確に対応しています。
クラウド連携やIoT対応など拡張性の高さ
LEVANCIOシリーズはクラウド連携やIoT対応といった高い拡張性を備えたビジネスフォンです。たとえばクラウドPBXや外部クラウドサービスと連携することで、遠隔拠点やモバイルワーカーともスムーズに通話や情報共有を行うことが可能になります。さらに、IoT機器との接続にも対応しており、オフィスの入退室管理やセキュリティシステムとの連動によって、一元管理を実現できます。
こうした機能は、業種や企業規模を問わず多様なビジネス環境に対応できる柔軟性の表れといえるでしょう。導入後に運用形態が変化しても構成の追加や機能拡張がしやすく、将来的なIT投資にも対応可能です。